7.解放


けれどね,どんな人間もいつかは限界がくるのですよ。

その限界がどんな形で出てくるかは人によって違うと思う。

それはラジオ当日のことでした。

結局,来訪できなかったOさんは音声のみの通信で参加します,ってことで宣伝をしました。

ラジオメンバーも集まり,ネタの台本も人数に合わせて書き,準備万端!

となったところで,でました。ヤツです。ワガママRさんです。

「参加させるとかあり得ない」

何があり得ないのか,あんたのワガママ聞いてここまで妥協したのに,その明確な理由も提示できないで言うこの女,嫌気がさしてきました。

いや,前からだけど。

しかし,自分のワガママは何でも通ると思っている女は調子に乗ってどんどん続けます。

「参加させるならこの先あなたとは付き合っていけない。」

はいでた,常套句。

「あなたとは付き合っていけない。」

そう言えば言うこと聞くと思ってやがる。

何度も言うようですが,あくまで未練とかじゃなくて,別れたら何をしでかすかわかったものじゃないから,この言葉にびくびくして服従していたのだけども,今回は他の人にも迷惑がかかってしまうし,何よりこのままこの状態をずっと続けるわけにはいかない。

うっかり結婚なんてしてしまった日には,一生苦しい思いをしなければいけない。

だから,勇気をふりしぼって言った。言ってやりましたよ。



「じゃあもう別れる。さようなら」



言った!ついに言ってやった!

まだ恐怖はあるが,なんてスカッとするのだろうか!

恐怖の鎖を断ち切るきっかけをあっちから持ってきやがった!

ハハッ,ざまーみろこのやろう!

調子に乗ってワガママを言っているところをたたき落とされた光景を想像するとニヤニヤせずにはいられません。

これまでの横暴に対する復讐としてはほんのささやかな復讐だったかもしれませんが,あまりの開放感にメンバーとハイタッチ,

これまでに恋人と別れてほっとしたことくらいはあったかもしれないけど,喜びを表現したのは初めてでした。

脳内BGMで「えんだー」と流れ,にっこり笑顔でメンバーと握手を交わし,記者会見なみのカメラ目線で記念写真の撮影までしました。

当然,Rさんは何らかのアクションを起こしてくるだろうとは思っていたけど,今までは一応彼女だったってことに遠慮があったから全力で反撃できなかったわけで,別れてしまえばこっちも自由に戦えます。

あぁ,一度は恋に落ちた仲なのに,ここまで叩くことに躊躇がなくなるものですから人間って不思議ですよね。

そんな清々しい気分でラジオも無事終了し,一段落ついたところで案の定きました。

ラジオ用の掲示板の荒らしです。

ごていねいに名前まで変えて

「彼女いるのに他の女をラジオに参加させるなんて今の彼女がかわいそう」

なんてバレバレの自作自演で書き込んでよくもまあ・・・

恥ずかしくもないのかねこの人は。

そもそも今の彼女って誰?別れたばかりで彼女とかいないんですけど。

と,掲示板の書き込みはそれだけにおさまりません。

ラジオメンバーの中傷まで始まりました。

しかしこの人,やっぱりちょっと足りない人だったみたく,今回のラジオのメンバーは以前Rさんに送ったラジオCDのメンバーとはちょっと違ったのですよ。

で,それに気づかず参加してない人の中傷とかしちゃって聞いてもいないのがバレバレ。

聞いてもないのに内容に対する批評に必死。

まさかこれでバレないとでも思っているのだろうか。

はたまた,彼女の中では何書き込んでも今までワガママを全部聞き入れてきた男がやり返してくることはないとでも思っているのだろうか。

まぁおそらくどっちもなのでしょう。

なんだか痛い人を調子に乗らせているのもカンにさわるのでちょこっと掲示板に書き込みをしました。

「Rさんだよね。バレバレの自演とかして恥ずかしくないの?」

ちなみにこれ,ちゃんと掲示板ではイニシャルだけしかださずに書きました。

管理の名前も出していません。

これでなんらかのアクションがあったら本人確定ですよね。

こう,掲示板で

「Rって誰?」

とかしらばっくれていればよかったものを,やっぱり足りない人だったようです。

携帯のメールに

「あのメールどういう意味?」

と送ってきました。

メールじゃねーよ掲示板だよばーかばーか!

まぁどっちでもいいですが,名前書いてないのになんで書き込んだ主が管理だと思ったのか。

そんでもってイニシャルしか出してないのに何故自分だと思っていたのか。

心当たりがないとこんなこと言えませんよね。

知らない人が偶然自分のイニシャル1文字だけを言ったからって本人でもなきゃこんなメール送ってきませんよね。

そもそもきっちり掲示板をチェックしていたこともこれでバレたわけで。

どういう意味もなにも,やっぱりバレバレですよ。

そしてこんなに単純な手で馬脚をあらわすとは・・・

言ってやりたい,声を大にしていってやりたい。





「引っかかりやがった!ばーかばーか!」





と。

お見苦しいところをお見せして失礼。

しかしこれほど思惑通りに罠に引っかかってくれるとは,

まさかこんな簡単な手には引っかからないだろうと思っていただけに,思惑通りなのが思惑通りじゃないといったよくわからない展開になりました。

いやぁ,後先考えずに行動するものじゃないですね。

そうして指摘されてラジオで荒らされることもなくなりました。

その後もいろいろとごたごたが続きましたがそれはまた次の機会に・・・。



阿修羅の如く −完−



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